つくしとふくとネコの母

保護猫の里親が書く日記

もう会えないのかも知れない

今日は、5年前に初めて出会った飼い主のいない猫のことを書きます。

 

私の家の裏には、まさに猫の額ほどの小さなスペースがあります。

 

庭と呼ぶには小さすぎるし、洗濯物を干すにも日当たりが悪いのでデッドスペースです。

 

雑草が伸び放題にならないように、時々草むしりしてました。

 

日当たりが悪いので、草花を育てる気にもなりませんでした。

 

2017年の10月ごろのことです。

 

そんな日当たりの悪い裏の敷地を2匹の猫が通り過ぎました。

 

1匹は茶色で耳が小さく、尻尾も短い猫。

 

もう1匹は黒と白だけどハチワレでもない変わった毛色。

 

何だか2匹で鬼ごっこでもしているみたいに、

 

並んで小走りに通り過ぎようとしていた。

 

その時、黒と白の猫が私の視線に気が付いたのか、

 

こちらをジーっと見つめて立ち止まった。

 

茶色の猫はそのまま小走りに行ってしまった。

 

黒白の猫は、しばらく私の目を見つめていたが、

 

ゆっくりと歩いていった。

 

私が今の家で暮らすようになって7年目に、

 

はじめて敷地内を歩く猫を見たのだ。

 

野良猫の少ない地域だと思っていたから、

 

同時に2匹も見かけたことにちょっとびっくりした。

 

私のこれまでの人生には、

 

6匹の猫の存在があった。

 

小学生のころに初めて飼った猫は、

 

親戚の家で生まれたシャム猫だった。

 

その後も家に居ついてしまった野良猫や、

 

庭に迷い込んだ子猫などを実家で飼っていた。

 

ただ、完全室内飼育ではなく半野良状態だった。

 

飼育方法としては、今から思えば失格だ。

 

大人になってからはアパート暮らしだったので、

 

猫を飼うことはなかったのだが、

 

ある時期に住んでいたアパートが1階で、

 

ベランダではなくフェンスで囲ったスペースがあった。

 

屋根があり、雨がしのげる場所だった。

 

ある夏の明け方のことだった。

 

そこにまだ幼さが残る猫があらわれた。

 

可愛くて、話しかけてしまった。

 

猫に食べさせられるようなものはなかったので、

 

その日はおしゃべりしただけだった。

 

でも、翌日も明け方もその子はやってきた。

 

その時、私は夜の仕事をしていたので、

 

明け方はこれから就寝する時間だった。

 

その子は窓の外にいて、ジーっと部屋の中を見る。

 

「入る?」と聞くと「にゃ」と短く鳴いて入ってきた。

 

ペット禁止の物件だったので、

 

そのまま飼うつもりはなかったのだが、

 

何だか心を許してしまったのだった。

 

しかしいつ日か姿をあらわさなくなってしまった。

 

私は猫に対して無責任な接し方しかしてこなかったのだ。

 

それをいつも後悔したり反省したりしていたので、

 

二度と猫にかかわらない人生を送るつもりでいたのだ。

 

しかし、10数年ぶりにじっと私の目を見る猫と出会ってしまった。

 

白黒の猫は、それからたまに姿を見かけるようになったが、

 

食べるものを与えることはしなかったので、

 

家に寄り付くこともなかったのだが・・・。

 

2018年の春になり、ぽかぽかとあたたかい日差しの晴れの日に、

 

白黒の猫はうちの玄関前の階段で香箱座りをしてくつろいでいたのだ。

 

買い物から帰ってきたときに、その姿を見てホッコリしてしまった。

 

思わず、その日に使うつもりで買ってきたカニカマを

 

細かくちぎって食べさせようとすると、

 

慌てて逃げてしまった。

 

生粋の野良猫なのか、人慣れはまったくしていない。

 

無理に食べさせることもないので、

 

そのままその日は「バイバイ」と言ってお別れした。

 

しかし、カニカマのことをおぼえていたのだろうか、

 

翌日も玄関前に座っていたのだ。

 

しかし近寄ると逃げてしまうし、

 

玄関前で野良猫にエサを与えるのは、

 

猫嫌いな人が近所にいると苦情が来そうなので

 

食べ物を出すことはしなかった。

 

すると、その事情を察知したかのように、

 

白黒の猫は私たちが初めて出会った家の裏の敷地に姿を見せたのだ。

 

私はその日、煮干しをあげてしまったのだ。

 

小さなさらに乗せて置いてあげると、

 

警戒しながらも食べて、おかわりを催促するように見つめてきた。

 

それからその子のために、キャットフードを準備するようになった。

 

ただ、その子をそのまま餌付けするだけではいけないという認識はあった。

 

白黒の子の性別を確認すると、女の子だった。

 

季節は春です。

 

もしかしたら、子猫がお腹にいるかも知れないし、

 

これから妊娠するかも知れない。

 

のんびりしてはいられないので、

 

野良猫の避妊去勢手術に関する行政の補助や

 

協力的な動物病院探しをして捕獲することにした。

 

捕獲は簡単ではなかった。

 

何しろ警戒心がものすごく強い子だったため、

 

2週間以上かけて捕獲に成功した。

 

捕獲できた時点で連絡すれば、

 

避妊手術してくれる動物病院は手配してあったため、

 

その日に直ぐ手術となった。

 

手術はスムーズではなかった。

 

獣医師からの報告では、

 

子宮と卵巣が未熟なのか、奇形なのか。

 

きっと妊娠したら育たないだろうし、

 

死んでしまったかも知れないと言われた。

 

通常であれば30分ほどで終わる手術なのに、

 

一時間以上かかったそうだ。

 

少し傷が大きくなったため、

 

本来は一泊入院の予定が3泊4日の入院になった。

 

退院して家に連れて帰ってきたとき、

 

白黒の子はキャリーから出たがって大きな声で鳴いた。

 

ゆっくりと出してあげると、家の中をそろそろと歩き、

 

部屋の隅に隠れてしまった。

 

少し時間を置いていると、窓枠に乗って鳴き始めた。

 

自分の居場所に帰りたいのだとわかった。

 

傷はしっかり縫合してあるし、

 

抜糸の要らない糸を使っているし、

 

2週間効く抗生物質の注射も打ってもらったので、

 

予定通りリリースした。

 

家の中で飼うつもりではなかったのだ。

 

地域猫として、食べ物の世話をするつもりだったのだ。

 

その覚悟で捕獲して避妊手術したのに、

 

リリースした途端に私はすごく後悔したのだ。

 

なぜ鳴き叫んでも、家の中で大暴れしようとも、

 

家猫にしなかったのか・・・

 

今でも自分を許せない。

 

エイズにも猫白血病にも感染していなかったし、

 

年齢はわからないがまだ若いはず。

 

これから長い猫生を過酷な外の世界で生きていくのかと・・。

 

その後、数日は姿を見せなくてすごく心配したが、

 

またご飯を食べに通ってくるようになり安心した。

 

それから約4年半の間、ときどきパタッと来なくなり、

 

心配させることもあったが、またふらっとご飯を食べ来る。

 

そんな関係だったのだ。

 

その間に、2匹の保護猫の里親になったのは、

 

白黒の猫を家猫にできなかった贖罪のような

 

気持ちが働いたのかも知れない。

 

あと何年、外の過酷な環境で生きられるのかと

 

胸が苦しくなることもあった。

 

それでもちゃんと姿を見せてくれるので、

 

強い子だなぁと思っていたのだが。

 

2022年の9月に家の周りで解体工事、新築工事

 

リフォーム工事などが次々に始まった。

 

落ち着かないのか、今までご飯を催促にきた場所には

 

来なくなってしまった。

 

玄関前にくるようになったので、

 

エサは玄関の方に運んだ。

 

しかし落ち着いて食べられない様子で

 

すっかり食べる量が減ってしまった。

 

ちょっと痩せたみたいだ・・・

 

そんな心配をするようになったのだが、

 

近寄ると相変わらず逃げる子なので、

 

捕獲して病院へ連れていくのは困難に思われた。

 

とにかく食べられるものだけでいいから食べて欲しいと思い、

 

マグロの刺身を与えたりもしたが、あまり食べない。

 

エナジーちゅーるや、シニア用、子猫用の高カロリーな

 

フードも食べさせようとしたが、ほんの少し舐めるだけだった。

 

最後に姿を見たのは、以前と同じ家の裏の敷地だった。

 

大好きなはずのウェットフード、焼きカツオ、煮干しなど、

 

色々出したがニオイを嗅いだだけで口をつけなかった。

 

目を細めて、しばらくその場で立ち座りをしていたが、

 

ゆっくりと歩き出して行ってしまった。

 

それから1週間が過ぎた。

 

これまでにも2週間以上、姿を見せなかったことがあるが、

 

エサを食べないような状態から来なくなったことはない。

 

どこかで私は覚悟しなければいけないと思っている。

 

もう会えないかも知れないと。

 

最後にいつもの場所に来てくれたのは、

 

もしかしたらお別れの挨拶だったのかも知れない。

 

白黒の子の名前はすずめ。

 

写真はあるけど、ここには載せません。

 

すずめとの別れがどんなカタチになるのか、

 

色々と想像しては泣いてきたけれど、

 

現実にお別れを覚悟しなければいけないと思っている今は、

 

涙よりも強い後悔と自分への怒りでいっぱいです。

 

あの日、中途半端な気持ちで捕獲した私が悪い。

 

入院中に覚悟して準備する時間はあったはずなのに、

 

何もかも中途半端な気持ちだった私が悪い。

 

ごめんね、すずめちゃん。

 

お家の子にしてあげれ自由は奪うけれど、

 

安全と安心を約束できたのに。

 

いつも警戒心を解けないあなたは、

 

ストレスも大きかったことでしょう。

 

すずめちゃん、もうホントに会えないのだろうか。

 

もしも他のお家でごはんをもらっているのなら、

 

それならそれでいいのだ。

 

もし他のお家の中に入れてもらったのなら、

 

それが一番いいのだ。

 

あなたが幸せに生きていることを想像するのは

 

自分がラクになるためだから許されないのだが、

 

たった一人で猫生を終えるなんて、

 

どうしても悲しくて想像できません。

 

すずめちゃん、許して欲しいとは言わない。

 

今度生まれてくるときは、

 

お家の中の子として生まれてきてくださいね。

 

すずめを幸せにしてあげられなくてごめんなさい。